事前指示書とACP

一人暮らし高齢者で身寄りがいない場合、本人の判断能力を失う万一の場合に備えて、自分にはどんな治療をしてほしいのか、前もって意思表示する文書のことを「事前指示書(AD=アドバンス・ディレクティブ)」と呼びます。人工呼吸器の装着等の延命治療を望むか否かなど、あらかじめ本人の希望を文書にしておくと、その指示に沿った治療が行われるとされています。但し、ADという文書があっても、患者と医師が十分に意思疎通を続けていなければ、ADが実質的に意味を持たない場合も想定されます。そこで、近年ADの発展形として「ACP=アドバンスト・ケア・プランニング(事前のケア計画)」という概念が登場し、本人が文書にまとめた自分の意思、つまり「結論」ではなく、家族や医療者らと何度も繰り返し話し合う「過程」に重きを置いた概念です。何度も対話を重ねて、時間が経過すれば、本人の意思が変わりうる場合もあり、その都度、文書は書き直されることになります。先日、弊NPOと任意後見契約を結んでいる一人暮らし男性が骨髄移植の手術をするに先立ち、医師・看護師と本人・弊NPOが集まって、ACPにあたる話し合いをし、本人の医療に関する意思表示を確認しあいました。重たい決断を迫られる患者本人を眼前にして、身につまされる思いがしました。