民法改正等のポイント⑨

民法改正等のポイント第九回は、「法定相続情報証明制度の開始」について。本制度は、2017年5月、不動産登記規則の一部を改正する省令の施行という形でスタートしました。相続が発生すれば、被相続人の所有不動産や預貯金などの財産名義を相続人の名義に変更する手続きが必要です。その場合、被相続人の出生~死亡までの連続したすべての戸籍謄本等を集める必要があります。そして、不動産なら法務局、預貯金なら銀行、有価証券なら証券会社と、名義変更の届け出先ごとに、戸籍の束が必要でした。届け出先の法務局や銀行なども、その戸籍の束を読み説いて、法定相続人を正確に把握する手間と時間が必要でした。そこで、本制度開始後は、集めた戸籍謄本を基に、被相続人と法定相続人の一覧図を作成し、一覧図と謄本類を法務局に提出すれば、法務局が「法定相続情報」の証明書を無料で何枚も発行してくれるようになりました。相続人は、その証明書を銀行などの届け出先に提出すれば、いちいち戸籍の束を提出する手間と解読時間が省けます。相続手続の時間短縮には、欠かせない仕組みだと思います。

 

民法改正等のポイント⑧

民法改正等のポイント第八回は、「法定相続分を超える権利の承継の対抗要件化」について。法定相続人が長男・次男の2人いるケースで、遺言にて「A土地を長男に相続させる」とされていた場合、長男は、相続登記をしなくても、A土地の権利全部を第三者に対抗し主張できたのが従来でした。2019年7月の民法改正により、この場合、長男は「法定相続分を超える部分」については、相続登記をしなければ、第三者に権利を主張できないことになりました。よって、早めの相続登記が不可欠になったということです。これと関連して、「相続登記の義務化」については、後日改めてお知らせする予定です。

 

 

 

公正証書3本締結

昨日、ある高齢者の公正証書3本作成に立会いました。一つは委任契約及び任意後見契約、一つは死後事務委任契約、そしてあと一つは遺言でした。STEPは、委任及び任意後見・死後事務の各受任者として、並びに遺言執行者として。生前から死後までご本人を支援するという体制を整えました。今後、本人が転居される際などの身元保証の役割もSTEPが担うこととなり、ご本人の安心を得た形です。

民法等改正のポイント⑦

民法等改正のポイント第7回は、「遺留分の金銭債権化」について。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・父母等)のために、民法で認められる相続財産に対する最低限度の取り分のこと。民法改正前は、遺留分を侵害された者は、「遺留分減殺請求」ができて、相続財産は共有状態となっていました。このため、相続財産が不動産や株式の場合、共有状態となって、権利関係が複雑になっていました。2019年7月からの改正後は、遺留分を侵害された者は、遺留分侵害額に相当する「金銭」の支払いを請求することができるようになりました。これを「遺留分侵害額請求」と呼び、遺留分侵害額請求をれても、不動産や株式が共有状態とはならなくなりました。つまるところ、改正後は遺留分の精算は金銭の支払いによることで一本化されたのです。

 

民法等改正のポイント⑥

民法等改正のポイント第6回は、「遺言執行者の権限明確化」について。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、必要な手続きを行う人のことですが、改正前は、この遺言執行者の権限が不明確で、そのため、遺言によって不利益を受ける相続人との間で利害が対立し、手続きの妨げになることがしばしばありました。そこで、2018年7月の改正により、遺言執行者の権限が明確化されました。これにより、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有するとされました。STEPでも、遺言執行者になることがよくありますが、遺言執行者就任通知にも、上記の権限明確化された点を記載するようにしています。